カント「道徳形而上学原論」(岩波文庫)第二章60〜61段落

(60)定言的命法なるものが存在するとすれば、前述の「各人の意志こそ、すべてその格律がを通じて普遍的に立法する意志」という原理が必ず存する。
 この原理は「普遍的立法」という理念をその中にもち、あらゆる利害関係、自身の傾向性を排しており無条件的であるからだというのがその理由である。

(61)これまでの歴史の中で議論されてきた道徳哲学にはある誤謬があったとカントは言う。義務というのは、ある法則が存在し我々の意志はその法則に強制される形で達成されるというのがその誤謬である。しかし、この議論からでは義務概念の根拠を見出すことはできない。この議論から得られたのは、義務ではなく各人の傾向性により行為を規定するということであった。常に条件付き、すなわち仮言的な形でしか命法として存在できなかったので、道徳的命令とはならなかった。
 以上のような、これまでの歴史の中で議論されてきた道徳哲学は、法則を外在的なものとみなしている点で「他律」的と言える。対して(60)で示されているような原理は、「自律」の原理と言える。


〜要約ここまで〜

今日は短いです。来週から新局面。