「音楽クラスタ」に憧れて

こんにちわ。お久しぶりです。
「年内最後」という便利ワードで、すべての行為がめでたく思える季節になりました。

巷では「音楽クラスタ」という、「音楽」という言葉を占有する不届き者達が、「ベストディスク」を発表するオサレ感あふれる営みを繰り広げており、私はその様子をハンカチを噛み締めながら見ております。

確かに!確かに私は音楽に疎い!今年発売されたCDでまともに聴いたのは、アルバムだと東京事変「大発見」

大発見

大発見

AKB48「ここにいたこと」

【特典生写真付き】ここにいたこと(初回限定盤)(DVD付)

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くらいだしね!しぬ!

しかし!私には本があるではないか!本が!年間で177冊も読んでいるのだから!(ブクログ調べ

だから私は本をレビューしてやろう。今年発売され、今年読んだ本をレビューしてやるのだ!そして、それを見て悔しい顔をする「音楽クラスタ」の表情を見るのだ…。

フフ、フフフ、ハハハハハハハハハハハハハハ

( ゚д゚)ハッ!


というわけでノミネート作品はこちら。(順は発売日順だよ!ノミネートには文庫化が今年のモノも一応入れるよ!雑誌は除くよ!)

小林 恭子,白井 聡,塚越 健司,津田 大介,八田 真行,浜野 喬士,孫崎 享
発売日:2011-02-05

思ってたより良かった。とりわけ、浜野・白井両名の項目はとても惹かれた。カントやシュミットなどを引いていたが、内容も平易であったように思う。再読したい。

共著なので仕方ないかもしれないが、「ウィキリークス」のスタンスの論評について著者毎にバラつきがみられたように思う。この一貫性は本の主題にさして影響はないということなのかもしれないが、少しだけ気にかかった。

「シェア」とは何か、どういう人間が「シェア」を好むのか、これからの「シェア」の在り方等を、計量的分析を伴いながら記述。
事例の参考にもなった。

新書なので、講談社メチエから出てる「完全解読」よりは読みやすいと思う。翻訳書は途中で挫折したので、これを参考にもう一回トライ。

修士論文(相当)」と見てビビったが、学部卒業後に色々やられた後の修士論文なので一安心。(何がだ)
「労働哲学」に関する基本的なエッセンスが詰まっている。(引用の多くがアーレントフーコーであることからもわかる)ただ、自分には少々難しくて読解できない箇所もあったが、4章の過労死を扱ったパートは比較的読みやすく面白かった。
「働かせる権力」というのは、国家・会社・家庭の三種がそれぞれ履行しているものだという見方は興味深かった。

この本では「暇」と「退屈」について、複合的な視座から分析し、現代におけるそれら概念の在り方について検討している。

「暇」と「退屈」は異なる。「暇」は客観的な条件である。時間に余裕がある、何らかの仕事に追われていない。そういう状態。
対して「退屈」はこれと異なり、主観的な規定である。
だから、この2つの概念から4つの場合に分かれる。
「暇であり、かつ退屈である」「暇であり、退屈でない」「暇がなく、退屈である」「暇がなく、退屈でない」

これらの中で一番想像しにくく厄介なのは、「暇がなく、退屈である」状態だと思われる。後にハイデガーを援用して、この「暇がなく、退屈である」状態とはどういうことかを分析する。


後の議論の展開は読んで欲しいところであるが、自分にとっては示唆に富むとこが多かった。「消費/浪費」「環世界」など、極めて重要と思われる概念について詳細に書かれ、全体の議論の見通しが良かった。アレントマルクス批判を批判する箇所は痛快だった。
わからなさ過ぎて困った、というようなところはなかった。それは序章にもあるが、意図的なところなのだろう。

本の刊行にあたり、度々著者は「自分の思うところをぶつけたので、是非読者の感想を聞きたい」という旨のことを言っていた。
個人的に、ここに書き連ねたくなるようなものではないが、皆何かを喚起される文だと思う。


あまり関係ないが、並行して読んでいた森岡正博無痛文明論」との近似性を感じるとこがあった。あまり上手く説明できないので、同じような感想を持つ人の詳細なレビューを待つか、頃合いを見て自分が纏めてみたいと思った。

ローティーを読んだことがないのでわからないのだが、13章のローティー解釈はアダム・スミス道徳感情論との類似性を感じたが、ローティーがどう言及してるかは知らない。

前に、著者が「クォンタム・ファミリーズ」という三島賞受賞の小説を出版したときに、「私の現時点での入門書として最適なのはこれです」と言っていたのでQFを買って読んだが、(面白かったものの)何故これが入門書なのかさっぱりという感じだった。
ただ、この「一般意志2.0」は凄く解りやすいし、これを読んだ後にもう一度QFやフラクタルを観ると、だいぶ様相が変わってくるかもしれない。

谷本 晴樹,淵田 仁,吉野 裕介,藤沢 烈,生貝 直人,イケダハヤト,円堂 都司昭
春秋社
発売日:2011-12-21

「統治」、「オープンガバメント」といった概念について哲学・社会学・経済学など様々な側面から書かれた論文集。
個人的には思想史的な流れをくんだ3章と4章、法哲学的見地を盛り込んだ7章が従来の興味と重なっているが、論者の多様性が自分のこれまでの観測範囲外からの面白い話が”良いノイズ”として紛れ込みやすくなっているので、一冊の本としてはお得な印象を持つ。
特に、これは「あとがき」で編者の塚越健司も書いているが、学者からビジネスの実務家、批評家など幅広いジャンルの書き手が名を連ねており、この一冊だけでもそれなりに多角的視座を取得できるような作りになっている。
例えば「震災時のソーシャルメディアによる有用性評価」という点では、5章は比較的良い方向で捉える一方、6章や9章では否定的に書かれている。そもそもネットが利用できる環境に”被災地”があったのかということについては、震災から少し経過した後で頻繁に語られるようになったが、この辺の評価の差も出自や視座の多角性を象徴しているように思う。

ただ、そのような良い点と表裏一体の話ではあるが、もう少し読み込んでみたいようなモノも中にはあり、これは今後の各筆者の活躍に依るところだと思う。

飽きっぽい性格だが一気に読めた。ただ、.reviewが事実上停止状態なのが個人的には悲しい。それは、.reviewという媒体そのものがオープンガバメント性を有した、これまでの評論系同人誌には無いものだと感じていたからだ。
本書の元は、その.reviewの勉強会だという。そのフィロソフィーは別な形で継承されることを(偉そうに)期待しています。


さあ、ではこの中から上位5位を発表します!(デケデケデケデケ……)

第五位!東浩紀「一般意志2.0」講談社
一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル


まず装丁がカッコイイ!さすが講談社!中身については僕よりもっと良いレビューがあるからそれを探してね☆
ただ、クソみたいな「自称◯◯分野の専門家」が、貶めたいがために書くような書評は無視しなきゃだぞ☆
「ぱんいつのしーいー0.2」っていう呼び方を流行らせたかったけど、全然流行らなかったNE!


第四位!古市憲寿「絶望の国の幸福な若者たち」講談社
絶望の国の幸福な若者たち


まず装丁が(ry さすが講d(ry 中身についt(ry

まあていうか、古市さんは別に「若者は幸福だから放っておいてくれ」なんて言ってないし、その辺誤読して曲解批判してどうなのとは思うけど、鈴木謙介が「そういう読まれ方を含めてベストセラーっぽい」と言っていたので、それはそれとしておこう!頑張れのりP!


第三位!速水健朗「ラーメンと愛国」講談社
ラーメンと愛国 (講談社現代新書)


さすがk(ry

講談社の回し者じゃないです!でも凄いね!今気付いたよ!
この本はね、「ラーメンから考える日本戦後史」みたいな?そんな感じで、凄く教養に溢れる良本。速水さんすげーなー、よく調べたなーと感服するような、そんな新書です。
今、札幌だと「スープカリー」が流行っていることになっているのですが、その違和感というのは、「ラーメン」がご当地化する過程でもあったのだろうなと思わされる。だからと言って「流行り」が悪いのかというとそうでもないわけですが、そこに何かの欺瞞を感じる。
まあいいんですけどね、味噌ラーメン美味しいし。AKBも好きだし(本書ではAKBについては触れてないですが)


第二位!開沼博「フクシマ論」青土社
「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか


結局、今年読んだ原発関連の本はこれだけになってしまった。きっと怒られるんだろうな、色んな人から。

でも良かったと思います。決して現状を追認するべきだというのではなく、そうなっているのだという正しい認識。まあ、そこの「正しさ」も物議を醸し、方法論的な問題もあるそうですが、「賛成か反対か」の二項対立に安易に落とし込みがちなところを上手く回避して問題解決するための一冊。


さあ!栄えある第一位は!
國分功一郎「暇と退屈の倫理学朝日出版社

暇と退屈の倫理学


半端ないっす。読んだ後の感想としては「ラーメンと愛国」に近い。
「うわーすげえ知ってるな」みたいな。その圧倒的教養量。一応、「倫理学」というアプローチになっていますが、ハイデガーやユクスキュルの環世界論・文化人類学的な方向からもアプローチされていて、すげえよまじすげえ。

「一冊だけ人に薦めるとすれば」間違いなくこの本。


文庫化が今年の永井均「倫理とは何か」、宇野常寛ゼロ年代の想像力」も本当はいれたかったんですけど、まあ文庫化だしなあ、、、と思ってね。「ゼロ想」も面白かったし「倫理とは何か」は、かなり影響を受けたことは間違いない。「倫理とは何か」もオススメです。括り方が「今年読んだ本」だとしたら、間違いなく上位、1,2位争いしてる本です「倫理とは何か」



てなわけで、また来年!じゃあの!