「アルハラ問題」の何が問題か

Twitterで物議を醸す話題は絶えず、毎日毎日いろんなことがいろんなとこで起こっている。フォローしてる人間の数だけTLの色合いは変わり、たった一人欠けただけで大きな渦を知らぬまま過ごすこともあったかもしれない。

さて、最近ではそんなTwitter上で起こったハプニングやおもしろい出来事はTogetterでまとめられている。その中から私が気になったことを一つ。

飲めない人は飲めない理由をきちんと説明すべき。学生じゃなくて社会人なんだから - Togetter

というまとめである。とりあえずは上のリンクをざっくりとご覧いただきたい。

まず、このまとめに関しては2つの論点がある。

一点目は、アルコールハラスメント通称アルハラに対する問題。
二点目は、このまとめそのものが孕む問題。


話を簡潔にまとめるため、まとめ内に出てくる人間を指しながら進めたい。
いろいろと面倒なので、仮に

リムーブした人:A氏
リムーブされた人:B氏
はてなブックマーク(以下:はてブ)した人:C 氏
まとめた人:D氏

とする。

それではまず一点目。アルコールハラスメント、通称アルハラについて。ここでA氏が主張しているのは、以下の三点。

・体質的に飲めない。医師による検査の結果でも極端に酒に弱いことがわかり、止められている。
・ しかし、会社の上司などは無理やり飲ませてくることがある。そういう慣習はどうなのか。
・なるべく飲まないように気をつける

果たして、このことに苦言を呈する人間がいるだろうか。いや、もしかしたらいるのかもしれない。実際にこのA氏はそういうアルハラの被害にあっているわけだし、私自身、個人的な体験の中の空気感としてそういうものがあることは理解できる。恐らくみなさんにもそういう経験はあるはずだ。

私自身も決して強くはないから、飲み会に誘われればまず同行する面子を聞いてから、落ち着いて飲めそうな人達であれば行くし、そうでなければ行かない。

しかし そういう取捨選択は、私が大学生であるからできることであって、どうやら社会人には難しいようだ。だからA氏はこんなに悩んでいるのだし、それに同調する声もあがる。

まずここで確認したいのは、A氏のアルハラの問題提起に対して反対意見を述べてる人は、私自身含めてまとめ内のツイートで も、コメントでも見受けられないということだ。これはまず大事なとこ。


そして二点目。このまとめが孕む問題性。

ここが、この問題を複雑化し肥大化させてる最たるものである。

A氏は上記のような主張をし、それに対するリプライに返答などをしていく。 そしてその流れも一段落した2〜3時間後、B氏はA氏に対し「飲めない理由も説明すべき、学生でなく社会人なのだから」という旨のリプライをする。それに対し翌日、A氏が「論点のずれたツイート」とし、激昂する。それに同調するC氏がこのB氏のツイートをはてブして、所謂 「炎上」となった。
その経緯をD氏がこのようにまとめたというわけだ。

まずひとつずつ精査していかなければならない。発端となる ツイートに問題があったか、ということだ。
B氏のツイート

私 は上のまとめのコメントでこのように書いている。

ていうかこれ、まとめてる人も特定の人間非難してる奴も過剰反応しすぎ。ブロックすんのは自由だし、別にいいん だけどそこまで激怒するような発言 には思えない。「てめーが飲めねえのが悪いんだろwプゲラ」みたいなのならまだしも、その場を切り取って見ればフツーのアドバイス。流動的な Twitterという場で、いちいち過去ログあさらなきゃたった一度の丁寧なリプライでブロックされるなんで、怖くてTwitterできません。

ただ、私はこの場でこれを誤読だったと認めたい。私が最初に読み取ったのはこうだ。

<B氏がこのA氏の上司ないし同僚であるならば、同じ組織の人間として、こういった「説明」を「飲めない側に求める」姿勢は問題があるかもしれない。
ただ、A氏とB氏は何のつながりもない、ただの フォロー&フォロワーの関係である。そうであるならば、アルハラに悩み愚痴をこぼすA氏に対し、社内にある「アルハラ的状況」(本来趣向の問題であるはずの飲酒行為に「飲みたくない」という意思表示のみならず「説明」までもしなければならないという状況)をやむを得ず是認した上で、きちんと説明し対応してもらうべきだ>、その意味で「フツーのアドバイス」とコメントしたのだ。

ただこの解釈は誤りだった。

B氏のツイートのおかしな点を確認する。
まず、二つめの文。「学生じゃなくて〜」の部分であるが、これはごく一般論であると思われる。職場でのコミュニケーションは大切だ、というのは特に疑問を感じる点ではない。個人的な話をすれば、「社会人」という言葉が好きではないとかいろいろあるけども、それはここでは関係ないので横に置いておく。
三つめの文。「お金貰ってるから〜」は判断に迷う。まあ別に仕事だけこなして好きな人と付き合えばいいんじゃない?と思う人も多いはずだ。私はそう思う。ただ、A氏をはじめこの ツイートに反発している人が憤りを感じているのはここが最大の場所ではない。最初の文だ。

B氏はこの一つめの文を「すべき」と結んでいる。これは、私が「誤読」とした解釈に当てはめても通用しないことはない。無理に解釈をすればこの文の前に()書きが入る。「(そういう会社の状況なら ば)」といった具合か。これであれば、私の最初の解釈は間違いではない。「やむを得ず是認」しA氏にとってベターな環境へもっていこうとする配慮である。

しかし、先程私が「一般論」とした、続く二つめの文により、この()書きの解釈ができなくなる。まさしくこれは「一般論」であり、ということはこの二つめの 文により補強される一つめの文も、B氏にとって「一般論」ということになる。

「お酒が飲めないというのなら、その理由も説明すべきだ。なぜなら、あなたは社会人であり、職場でのコミュニケーション(ここでは飲酒の場を指すと思われる)は大事だからだ。」

B氏のツイートは本来こういう文であり、そのため私のような解釈が成り立たない。

さすがに、「一般論」という形で<「飲酒しなければならない」と いう前提があり、よってそれを断るならば「説明」しなければならない。>という論じ方に賛同はしかねる。あくまで「説明」をA氏に求めるのは、それが本来的には例外であるということを確認しておかなければならない。

また同様に私のコメントの

流動的な Twitterという場で、いちいち過去ログあさらなきゃたった一度の丁寧なリプライでブロックされるなんで、怖くてTwitterできません。

という部分も誤りということになる。これは、私の初期の解釈が正しかった場合のみ有効であり、A氏が怒ったのはB氏のツイートから滲み出てくる「アルハラ的感性」に対してであるからだ。A氏の過去のツイートを読んでなかったから怒っているのではない。


これで、B氏のツイートが一定の非難を浴びる理由はわかった。それでは、何故まとめのコメントでは意見が分かれ、問題が複雑化してしまっているのだろうか。おおよその人はA氏の主張するところに異論はないはずだ。

まず第一に、私のような「誤読」をしている人が一定数いるだろうということ。自己弁護ではないが結構微妙なニュアンスなので、自分もこのエントリを書こうとし、最初の解釈のまま書き進めようとしてよく読みなおしてから気付いた。この点についてはお恥ずかしい限りだ。

しかしそうではない人もいる。B氏のツイートの問題性をしっかりと認識しながらも、このまとめに対し否定的なコメントが見受けられるからだ。

これは、A氏がB氏をリムーブした後の流れに起因するものと思われる。上にも簡単な流れを書いたが、この後C氏がA氏に同調し、はてブする。そこから一気にこのツイートが注目され取り上げらることになる。
恐らくこのまとめに否定的な人の多くが嫌悪感を示すのは、この注目される過程のA氏とC氏のやり取りであろう。傍から見ると、どう見てもその様子を楽しんでるようにしか見えない。もちろん私も基本的な考えはA氏に賛同であるものの、A氏自身がC氏やはてブにコメントを寄せる人間を見て、気分が大きくなっているのではないかと感じさせる雰囲気がある。こういう例は私も以前、他の場面で感じたことがある。Twitterの構造上、自分のTLこそが世論だと錯覚してしまう。その錯覚の世論が自分に同調してる場合、それに気を良くし、過大なリンチを与える例というのは、少なくないのかもしれない。

また、A氏はB氏に対して異常なまでの攻撃性を見せる。これは、本来的に戦うべきはA氏自身の上司・同僚であるにもかかわらず、たった一言、それも内容はともかく言葉尻そのものは丁寧なB氏のツイートに何故そこまで攻撃的なのか、というまとめの閲覧者側の情緒的側面も絡んでいる。


A氏はこれらをきっかけにアルハラに対しての理解が深まれば、と書いているが、特定の人間を槍玉にあげて注目を集める方法が倫理的に許されるとは到底思えない。もし、アルハラの問題についてのみ取り上げたいのならば、このまとめも冒頭のDV被害者の人とA氏のツイートだけ載せておしまいにすればいい。そうすればきっと、そのまとめのコメント欄で同様の議論になっただろう。もしかするとB氏のような人も出てきたかもしれない。しかし、その場合このB氏のように炎上することもなかったし、極端な言い方をすればこのまとめのリストを肴にやいのやいの言ってる方がよほど建設的な理解の深まりになるはずだ。
それを、こんな火事現場を見せられて「さあ!考えろ!どっちが悪い!」というんじゃ、いつまで経っても本質的な部分には迫られず、ただただA氏・C氏・D氏の満足感が深まるだけだ。

ちなみに付記しておくと、まとめのコメント欄にあるA氏の主張に対する賛同イコールB氏批判ではないことは当然のことである。そこを錯覚してる人がいるのではないかと不安に思うのと、A氏がB氏に対して「寝てるのわかってて云々」という場面があるが、これも言いがかりである。B氏のフォロー数は50名程度で、2〜3時間くらい前のことであればB氏のTL上では特段昔のことではないかもしれない。また、その時そのタイミングでなければリプライしてはいけないというルールもない以上、その程度の時間差でリプライしたからといって、B氏に悪意があったとは言えない。
また、B氏に一定の同情が集まるのは、その伝えた言葉の柔らかさであり、もしこれが「酒のめねえおめえが悪いんだろwwwwww」みたいなものであれば、恐らく今まとめに反発してる層も反発はしてなかっただろう。


整理すると、
・A氏の主張そのものに反対する人は少ない。
・B氏のツイートを良い方に誤読してる可能性がある
・一番の問題は、はてブ・まとめであり、「アルハラへの理解が広まれば」とい う 目的には合致し得ない特定の人間へのリンチが、このまとめへの反発を生む最大の要因

ということではないか。

私の誤読に基づいたコメントを読んで気分を害された方がいれば謝りたい。とりあえず、私が現状で考えるこの騒動の問題点は上の三つだ。みなさんの理解の一助になれば幸いです。

今日も暑い。